子どもたちの生きる力を伸ばすために

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コミュニティカレッジ 輝く子どもの未来のために!

教育現場と地域の絆をきずく

2013年6月29日(土) 9:15-9:30

「子どもたちの生きる力を伸ばすために」

熊谷文男

私は発起人の一人として、産学官からなるプロジェクト「社会人基礎力研究会」を三年前に立ち上げました。この会は、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」、すなわち、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」、具体的には、「前に踏み出す力(action)」、「考え抜く力(thinking)」、「チームで働く力(teamwork)」の三つの力を向上させようと設立したものです。この「社会人基礎力研究会」は、経済産業省、10数校の大学、そして10数社の民間企業が参加して進められました。

この「研究会」では、色々な事例が紹介されました。たとえば、小学生及び中学生の生活体験を調べた結果が報告されました。それによりますと、普段は「食料品などの買い物のお手伝いをしない小学生・中学生が65%」、「家の掃除の手伝いをしない小学生・中学生が61%」、「寝具の片づけをしない小学生・中学生が58%」、ついでに、「日の出・日の入りを見たことがない小学生・中学生が43%」というような結果が出たそうです。正に、「食事つきのホテル住まいの‘上げ膳据え膳’の子供たち」と言っても良いような状況です。

さらに、私の友人で、法政大学大学院の名誉教授で政府の中央労働委員会の委員長をされておられる諏訪康雄先生、この諏訪先生が「社会人基礎力」という言葉の生みの親で、「研究会」の座長でもありますが、この諏訪先生が、日本テレビが放映している「はじめてのおつかい」こそが「社会人基礎力」の原点である、といつもおっしゃっておられます。

「はじめてのおつかい」は、勿論、ご覧になった方は、たくさんおいでになると思いますが、

  • 3歳、4歳から小学校低学年の小さな子どもが、一人でおつかいに行きます
  • 経験したことがない役割の重圧に、緊張する子どもが映し出されます
  • 求められる能力(メモが必ずしも取れませんので、言付(ことづ)かったことを理解して記憶にとどめること、お店の人とお話をして目的のものを間違いなく買うこと、等々(などなど))は、これまで全く経験していないことです
  • 課された責任、たとえば、寄り道をしないで約束のものを自宅まで持ち帰ることも、これまでになかなか経験していないことです
  • 買い物を終えて、家に帰りつくと、わっと泣き出す子どももたくさんいます

というような、番組です。

昔は、八百屋さんや魚屋(さかなや)さん、肉屋さん、そして乾物屋さんへ「おつかい」に行って、ドキドキしながらお店の人と話をして、一つひとつ買い物をしていました。私も経験があります。「おつかい」の帰り道、犬に追いかけられて、お釣りをすべて落としてしまったこともありました。最近の様に、スーパーマーケットやコンビニがたくさんあり、コミュニケーションがほとんどいらずに買い物ができるために、この「社会人基礎力」が必ずしも育っていないのではないか、というわけです。

最近の新入社員に、「気が利かない」、「段取りが悪い」、「口ばかりで体が動かない」、「人に感謝しない」というダメ社員が増えてきている、とおっしゃる企業の人事担当者がたくさんおいでになります。色々と調べてみますと、これらのことと、子どもの頃、家で「お手伝い」をしていたか否か、という事実との間に強い相関関係があった、ということが報告されています。こうしたことから、子どもの頃に家で「お手伝い」をしていたか否かを基準に企業が採用を決める、という会社も実際にいくつか出てきました。「お手伝い」をすることで、子どもたちは「段取りよく動くことを覚え」、「様々なことに気を配り」、「自ら考えて体を動かす」ようになります。そして、さらに大切な「感謝する心が身に付いてゆく」、ということです。

企業の新入社員に「社会人基礎力」が身に付いていない人が多くなってきましたが、それは、「大学」に責任があるのではないか。いやいや「高校」に、「中学」に、「小学校」に、「保育園・幼稚園」に、さらには、「親」に問題があるのではないか、という議論が続きました。

現代は、「新幹線」のスピードで世の中が移り変わっています。「大学」では「特急列車」のスピードで、「高校」では「急行列車」で、「中学」では「快速列車」で、小学校では「各駅停車」、保育園や幼稚園では「路面電車」のスピードで時間が流れています。

それぞれのスピードに合わせて、楽しみ方が異なります。「路面電車」は、スピードは出ませんが景色の移り変わりをじっくりと楽しむなど、「路面電車」ならではの良さがあります。それぞれの成長の時期に、それぞれに合わせた必要なスピードがあると思います。

最近は、「保小連携」や「幼小連携」など、お互いの連携が強まっております。さらに、地域の皆さんとのつながりが強いほど健全な子どもが育つとも言われています。この様に子どもたちを取り巻くステークフォルダーがお互いに補完し合い、シナジー効果を生み出す関係を構築して行くべき、正にこの時に、この様な機会を与えて下さったことに、心より感謝いたします。今回の「小学校・中学校の部」に先立ちまして6月3日(月)に開催されました「保育園・幼稚園の部」は大成功でした。重ねまして、関係者の皆様に感謝いたします。有難うございました。